月別: 2020年6月

経営者は二度立ち上がる

-柚木治氏(ジーユー社長)
 

日経ビジネスのインタビュー連載記事が面白い。

自分のアイデアで、周囲の反対を押し切ってまで推し進めた野菜事業で26億円の累計損失を計上した柚木氏。

業績が伸びずに赤字が累積し、総スカンの中、柳井氏だけは「まだ続けてもいい」と背中を押してくれたが、初めての大きな失敗に心が折れた柚木氏は開始1年半で事業撤退を決め、自身は退職を選択した。この決断に対し、柳井氏は、「26億円損して、勉強して、それで辞めますですか。まずはお金を返してください。」と。

今、この26億円の損失を出した張本人・柚木氏はファーストリテイリングに留まっている。しかも、ジーユーの社長として。

柚木氏曰く、野菜事業失敗の最大の原因は、自分があきらめたことだという。
当時、柚木氏の妻のアドバイスをはじめとして、事業改善への貴重なヒントは伝えられていたにも関わらず、柚木氏の耳には届かず、柚木氏の自信喪失と共に事業の可能性への自信も失ったように見える。

今、ジーユーの社長となった柚木氏は「仲間と一緒になって人々に驚きを提供し、喜びを分かち合う」という新しい経営者像を目指している。柳井氏のようなスーパー経営者にはなれなくても、「普通の人間でも企業の経営ができる」ことを証明したいという。

野菜事業の時の柚木氏からは、全てを一人でコントロールして一人で全責任を負う、強いリーダー像がうかがえるが、現在の柚木氏からは、もっとフラットで従業員の能力を引き出そうとする謙虚なリーダー像が伺える。

事業の成否=経営者個人の能力という認識では、プライドが経営判断に複雑に絡みつき、いずれ行き詰る。

オーケストラの素晴らしい演奏はオケ(=従業員)の実力が引き出された結果であり、オーケストラの失敗は指揮者(=経営者)の責任、という構図に似ていないだろうか?

日本の普通法人数は約260万社と聞くが、260万人いる経営者のうち、いったいどれくらいの人が柳井氏や孫氏のような超人的な経営センスを持ち合わせているのか。
柚木氏の目指す、「普通の人間」にも手が届く経営者像は、カリスマ経営者神話よりも現実の企業経営の参考になると感じる。

https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00129/052600026/?i_cid=nbpnb_arc
 

ハンブル・リーダーシップ


社会の変化のスピードが激しく、自分が経験したことのない状況にも関わらずスピーディーかつ適切な判断を求められる今の時代、リーダーシップを発揮するのは簡単なことではありません。

ハーバードビジネスレビュー7月号では、そんな悩めるリーダーたちのヒントになる新しいリーダーシップスタイルが紹介されていました。

MITスローン経営大学院のSchein教授が提唱する、
【ハンブル(謙虚な)リーダーシップ】 

リーダーシップをリーダーとフォロワーの関係性で捉えることをやめて、もっと言うと、そもそもの仕事上の役割という関係性を超えて、同じ目的を共有する対等な個人として、ともにプロジェクトの成功を目指します。具体的には、自分では理解できない部分・判断できない部分を素直に伝え、部下(と、言うよりはむしろ対等なチームメンバー)に質問して彼らの知見・意見を求め、議論しながら進めることでプロジェクトを成功に導く。そして、失敗した時にはすべての責任を取る。これが、ハンブル・リーダーの姿、なのだそうです。

チームメンバーの性別、国籍が様々で、年上の部下をマネジメントすることも珍しくなくなった今、リーダーシップのスタイルも変えていく必要があるのは誰もが感じるところです。とは言え、突然アメリカのドラマのようなカジュアルな関係を作るのは難しく、既存の日本的空気を壊さずにスムーズにリーダーシップスタイルを変化させていく方法は誰もが悩むところ。

このハンブルリーダーシップは、日本社会の感覚にもフィットしやすいように感じます。会社の人間関係に当てはめて考えると、これまでの統制型組織の常識から逸脱するのでイメージしにくいですが、個人の関係に当てはめると、至極当然のことを言っています。夫婦や友人との関係は、まさに、自分は完全ではないという謙虚な気持ちをもち、相手を信頼し、尊重し、一緒に考えてより良い答えを導くものです。人として当たり前のことなのに、私たちは、なぜか会社では人間らしくいられないのかもしれません。

興味持たれた方、Schein教授の最新の著書で一緒に学んでみませんか?私もこれから読んで勉強したいと思います^^