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マーケティングとは、ブランディングである。

具体的な事例とわかりやすい文章でブランドの本質を伝える本書。ブランディング22の法則。

世界の様々な有名企業の事例を学べて、いつのまにかマーケティングの専門家的「ブランディング」発想が身について、読み終わる頃には「さて、じゃあうちのブランドにはどんなイメージを持たせようか…」と頭が回り始めることでしょう。

著者がブランディング戦略専門のコンサルタントなだけあって、実務家の視点と言葉でマーケティング理論の本質を伝える稀有な一冊です。「ブランディングって、、、ロレックスやルイ・ヴィトンやレクサスの世界の話しでしょう?」と、思った方には必読です。

近所のスーパーマーケットの中で勝敗を決めているものこそブランディングなのです 。

経常利益率31%のエーワン精密は、何を売っているのか?

日経ビジネス2020年7月20日号に面白い記事がありました。山梨の売上高20億の中堅機械部品メーカー・エーワン精密が、なぜ31%もの売上高経常利益率をたたき出すのか。しかも、「創業以来の売上高経常利益率は平均で約35%(日経ビジネス2019.06.03)」と言うから、さらに驚きます。

大手企業・日本電産からの値下げ要請にも一歩も引かず、一担当者が「それはできません。」と電話を切ってしまう堂々たる対応ぶり。この交渉力の強さの源泉はどこにあるのでしょうか。

実は、エーワン精密は機械部品を売っているのではありません。顧客であるメーカーに「破損した部品をすぐに取り換えてラインを最速で再稼働させる。」という利便性・経済性を売っています。

すなわち、スピードです。

しかも、競合他社では1~2週間かかる製品を最短1日、さらに、加工内容によっては午後3時までに受けた注文を当日出荷することもある、という驚異的なスピードです。

機械部品のモノの価値だけを評価すれば、競合他社より割高な製品ですが、顧客の立場に立ってスピードという価値を評価すれば、多少納品価格が高かろうと、1~2週間も機械の稼働を停止する機会損失に比較すれば、エーワン精機の割高な部品を購入して機械の再稼働を早めることは、十分に合理的な選択なのです。

実際、創業者である梅原氏は、「技術力は確かにあるが、他社にまねできないほど高いわけではない」と語っています。

販売する企業の側では、自分たちの商品は販売している部品そのものととらえがちですが、顧客企業の側からみると、仕入れている部品というのは最終製品の製造のためのプロセスでしかありません。BtoBビジネスであろうと、いかに顧客(納入先)の立場に立って自社の付加価値を高めるかが、利益率を左右します。

今回の日経ビジネスの記事では、人材への集中投資(全従業員が正社員で、緊急の仕事に備えて余剰人員を抱える経営方針)や、納期短縮のための3000種類に及ぶ半製品ストック、設備投資などを「ぜい肉」と表現して「危機に強いぽっちゃり企業」という企画にまとめていますが、実際のところ、エーワン精密は自社の企業戦略を明確に持ち、その実現のために必要な強みに絞り込んだ投資をして高収益体質を実現している、非常に効率的な経営スタイルです。

 

甲府盆地で研ぎ澄まされた光を放つエーワン精密、皆さんの経営のヒントになれば幸いです。

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00176/070300002/

従業員の自主性を引き出す方法

「エンパワーメントは一日にして成らず」(意訳)
という、自律型組織づくりの教科書のご紹介。

従業員に自主的・意欲的に仕事をしてもらうことは、人材の限られた中小企業がみな理想とするところです。権限移譲、ビジョンの共有、よくほめる?etc…やるべきことがなんとなくわかるようで、いざ取り組もうとしても全く成果が見えてこない。。。大半の企業がもどかしい状況にあるのではないでしょうか。

同じ状況から、星野リゾートの星野社長が自律型組織を築き上げた指南書が、こちら。

小説仕立てになっていて、読者は主人公の経営者と一緒に自立型組織づくりの手順とポイントを学べます。
そのポイントとは。。。?

1.客観的な経営指標情報の共有
→顧客満足度の調査結果や客数、客単価、商品の利益率、恥ずかしくても店舗損益情報まで!こうした情報が、従業員が自分で考えるためのベースとなります。

2.ビジョンと個人のミッションの明確化
→会社は、何のために存在しているのか、その会社の存在目的実現のために、自分はどんな役割を果たしていくのか。ここに筋が通ると、スッキリします。

3.組織構造をピラミッドから逆ピラミッドに移行する
→長期戦であり、経営者としては、焦る自分との闘い。覚悟と忍耐が必要。上下意識の強い日本の場合、フラットな人間関係の素地をつくることが、まずは必要です。

ちなみに、日本語タイトルは、なぜか「1分間エンパワーメント」ですが、原書は「エンパワーメントは1分じゃ無理(直訳)」、と、真逆のタイトルです。組織改革は一朝一夕にはできませんよね。
ストーリー仕立てで読みやすいですが、中身は深く、示唆に富む良い本ですよ^ ^

ハンブル・リーダーシップ


社会の変化のスピードが激しく、自分が経験したことのない状況にも関わらずスピーディーかつ適切な判断を求められる今の時代、リーダーシップを発揮するのは簡単なことではありません。

ハーバードビジネスレビュー7月号では、そんな悩めるリーダーたちのヒントになる新しいリーダーシップスタイルが紹介されていました。

MITスローン経営大学院のSchein教授が提唱する、
【ハンブル(謙虚な)リーダーシップ】 

リーダーシップをリーダーとフォロワーの関係性で捉えることをやめて、もっと言うと、そもそもの仕事上の役割という関係性を超えて、同じ目的を共有する対等な個人として、ともにプロジェクトの成功を目指します。具体的には、自分では理解できない部分・判断できない部分を素直に伝え、部下(と、言うよりはむしろ対等なチームメンバー)に質問して彼らの知見・意見を求め、議論しながら進めることでプロジェクトを成功に導く。そして、失敗した時にはすべての責任を取る。これが、ハンブル・リーダーの姿、なのだそうです。

チームメンバーの性別、国籍が様々で、年上の部下をマネジメントすることも珍しくなくなった今、リーダーシップのスタイルも変えていく必要があるのは誰もが感じるところです。とは言え、突然アメリカのドラマのようなカジュアルな関係を作るのは難しく、既存の日本的空気を壊さずにスムーズにリーダーシップスタイルを変化させていく方法は誰もが悩むところ。

このハンブルリーダーシップは、日本社会の感覚にもフィットしやすいように感じます。会社の人間関係に当てはめて考えると、これまでの統制型組織の常識から逸脱するのでイメージしにくいですが、個人の関係に当てはめると、至極当然のことを言っています。夫婦や友人との関係は、まさに、自分は完全ではないという謙虚な気持ちをもち、相手を信頼し、尊重し、一緒に考えてより良い答えを導くものです。人として当たり前のことなのに、私たちは、なぜか会社では人間らしくいられないのかもしれません。

興味持たれた方、Schein教授の最新の著書で一緒に学んでみませんか?私もこれから読んで勉強したいと思います^^

2019年のベストブック

350頁のほぼ全てが、社会学・哲学の50のコンセプトに関するエッセンシャルなお話で占められている稀有な一冊。著者は、紹介する各著を当時の時代背景も含めて学び、咀嚼してしっかりと自分のものにした上で、そのエッセンスだけを分かりやすく解説してくれています。

実学志向のビジネス書のようなタイトルですが、知識と技術のみに終始せずにリベラルアーツを学ぶ重要性を教えてくれる素晴らしい一冊でした📖